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家の前にリスが倒れていた。
身じろぎもせず、さんさんと照りつける太陽の下、コンクリートの道路の上で倒れていた。
生きている証はその大きく見開いた瞳と、小刻みに上下する腹のみ。
外傷は見当たらない。強いて言えば尻尾がやけに平たい所くらいか。
近づいてみたり、棒でつついてみたがぴくりとも動かない。
妹と途方に暮れていると、突然そのリスは移動した。
後ろ足を引きずるようにして、まるでトカゲのように。
しかし数メートル行った所でまた止まってしまった。
よく見るとかなりよだれが垂れていた。やはり車に轢かれたのだろうか。
動いたり止まったり、それを繰り返すリスを見守っていた私たちは何をすればいいのか分からなかった。
日陰を作って涼しくしてあげようとした。水をあげようとした。コーンを立てて車に轢かれないようにした。
母は気味悪がって近寄らなかった。弟は「ただのリスだろ」と相手にしなかった。
その通りだ。ただのリスだ。
死にきっていない、むしろ死にそうなのかもよく分からないまま、道路で倒れているリスなんてはっきり言って迷惑だ。
いっその事死んでいれば、どう対処すればいいのか悩まなくて済んだろうに。
しかし一寸の虫にも五分の魂というだろう。
もともと動物好きな私たちはやはり何かせねばならないのではと悩んだ。
道路に放置する訳にはいかないと思った。
助けてやりたいとも思った。
でも庭に持ってきてそこで死なれるのも困ると思った。
途方に暮れた。何をすればいいのかさっぱり分からなかった。
結局(IMで聞きまわった結果)Animal Careセンターに電話した。
そのとき、電話の人はリスのことを「He(彼)」と呼んだのではっとさせられた。
「それ」や「あれ」じゃなくて「彼」なのだ。オスかメスかはどうでもいいとして。
道路通行の邪魔になっている「物」じゃなくて、倒れている「者」なのだ。
死んでいるわけじゃないけど、やはりあのまま放っておく訳にも行かないので、オフィサーに来てもらって彼を連れて行ってもらった。
オフィサーは小さなケージを取り出し、下にタオルを敷いた。そしてタオルをもう一枚取り出し、彼の上に多いかぶせるとタオルごと彼を持ち上げ、ケージの中にいれた。
なんとなく、彼は以前よりも元気だったように見えた。少なくとも、道路の上で倒れている時よりは。警戒しているだけかもしれないけど。
帰り際にオフィサーは「ありがとう」と私たちに言った。私たちも機械的に「ありがとう」と返すとオフィサーは帰っていった。
何に対してのありがとうだろうか。倒れているリスを報告したからであろうが、「ありがとう」はどこらへんに対してだろうか。
リスを救ったからだろうか。
それともサンノゼの路上を綺麗に保ったからだろうか。
あの後、彼は癒されるのか、それとも永遠の眠りにつかされるのか。
私たちに真意を知る術はない。
ただ分かるのは、彼が苦しんでいるというのに私たちは結局何も出来なかったという事。
結局他人の手を借りて、厄介払いをしてしまった気がしてならない。
それでもあの状況でそれ以外私たちに出来たことは多分、無い。
普段なら、半径3メートル以内に近づけば、一目散に逃げだすリス達。私達が彼らを捕って食うとでも思っているのだろうか。
しかし彼はある程度動けるにもかかわらず、近づいても棒でつついても逃げようとはしなかった。
その大きく見開いた漆黒の瞳に映ったのは、諦め。絶望なんて大げさなものじゃない。
小刻みに動く瞳は私達を認識していた。
しかし逃げようとするだけ無駄だと理解してて、ただただ自分の状況を受け入れていた。
「ありがとう」と言った私達の瞳も、同じように「諦め」を映していたのだろうか。
2006/05/12 その他 Trackback() Comment(0)
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